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ノロウイルス感染症
最近、嘔吐(吐くこと)や下痢を訴えて受診される人が増えています。これは、感染性胃腸炎で多くみられる症状です。原因は、細菌、ウイルスや寄生虫など様々ですが、 なかでも冬に集団で発生する感染性胃腸炎の原因として問題となっているのがノロウイルスです。
1.症状は?
主な症状は、吐き気、嘔吐と下痢で、発熱を伴うこともあります。嘔吐や下痢は、一日数回からひどい時には10回以上になります。 症状は、1~2日間で軽快することがほとんどです。
2.治療方法は?
インフルエンザウイルス感染症とは違い、特効薬はありません。最も重要なことは、水分補給をこまめに行い、脱水症になることを防ぐことです。 特に小さなお子さんやお年寄りにとって脱水症は大敵ですので、吐き気が強くて、水分を摂ることができない場合には、点滴で補います。 抗生物質は効かないので使用しません。通常、吐き気止めや整腸剤の内服などの対症療法が行われます。止痢剤(いわゆる下痢止め)は、 症状の回復を遅らせることがあるので使用しないほうが良いでしょう。
3.どうやって感染するの?
ほとんどが口から体内にウイルスが感染する、いわゆる経口感染です。ただし、ウイルスが口にたどり着くには、様々な経路があります。
  1. 二枚貝のカキなど汚染された食品を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
  2. ノロウイルスに感染している調理者が、よく手を洗わずに素手で食材をさわることで、サラダやパンなどの貝類とは関係のない食材から感染する場合
  3. 家庭や共同生活施設など人同士の接触する機会が多い場所で、ノロウイルスで汚染された手指、衣服、物品等を触ることによって感染する場合
  4. ノロウイルス感染症を発症している人の吐物や下痢便が床などに飛び散り、その一部を吸い込むことによって感染する場合
4.どうして集団で発生する事が多いの?
まず、ノロウイルスの感染力が非常に強いということが挙げられます。ノロウイルスは、感染者の吐物や便中に大量に含まれています。 吐物には1グラム当たり1万~10万個程度、発症初期の患者の便には1グラム当たり約10億個存在します。ノロウイルスは100個以下という少量でも、 体の中に入ると感染します。またノロウイルスは、下痢などの症状がなくなっても、通常、1週間程度、長いときにはヶ月程度、便中にウイルスが排泄されるため、 どうしても他人に感染させる機会が多くなります。さらに、一般に使われているアルコール系の消毒薬が効きづらいことも理由のひとつです。
5.予防方法は?
ノロウイルスは「はしか」や「風しん」のように一度発症すると、生涯かからないというものではありません。また、ワクチンもないので「手洗い」や「消毒」が重要です。
  1. 石けんでよく手を洗いましょう
  2. 石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれ易くする効果があります。
  3. 吐物や下痢便を処理する際には、必ずマスクと手袋をつけましょう
  4. 捨てても良いエプロンなどを着るのもお勧めです。
  5. 正しい方法で消毒しましょう
  6. 吐物や便が付着した衣類などは、85℃、11分間以上の熱水で洗って下さい。ただし、洗っている最中はノロウイルスを含んだ水が飛び散り易く感染する機会が増えるので、 可能であれば洗わずにビニール袋などに入れて廃棄して下さい。
    環境や物品の消毒には家庭でよく使う塩素系漂白剤(ハイタ-など)を使って下さい。吐物や便が直接付いた床やテーブルなどは 水で20倍に薄めたもの、 それ以外は100倍に薄めたものを使用します。薄めた液は保存せず、その都度つくるようにして下さい。ドアノブなど直接手が触れる場所の消毒や塩素のにおいが気になる場合は、 消毒した後、水拭きすると良いでしょう。
    布団やカーペットなどすぐに洗濯できない場合は、よく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。
ノロウイルスはとても感染力が強いため、一家全滅というケースもよく見られます。たかが胃腸炎と考えないで、適切な予防対策を行うことが重要です。
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