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大腸がんのお話
厚生労働省の人口動態統計によると、平成21年における日本人の死因の第1位は「がん」で、実に3人に1人が亡くなっています。 また「がん」の部位では、第1位が肺がん(19.6%)、第2位が胃がん(14.5%)、第3位が大腸がん(12.3%)となっています。 ほかの「がん」と同様に大腸がんも早期発見が重要で、早期がんの段階で治療ができれば、治療5年後の生存率は、 ほぼ100%となっています。
大腸がんを発見する検査には、便潜血反応検査と大腸内視鏡検査があります。便潜血反応検査は、 便の一部を採取し血液が混じっていないかを調べる検査で、 大腸がん検診でも採用されている方法です。 受診者の5~10%が陽性となっており、うち精密検査を受けた方の0.1~0.15%に大腸がんが見つかっています。 簡単な検査ですが診断精度は必ずしも高くなく、進行大腸がんの方でも約30%が陰性と判定されていたとの報告も みられます。 したがって、「便潜血反応検査が陰性=大腸がんではない」と安心することはできません。
一方、大腸内視鏡検査は、先端に高解像度のCCDカメラを搭載した直径12mmほどのスコープを肛門から挿入して 大腸の内側を観察するもので、診断精度が高い検査です。 しかし、大腸の中に便が残っていると十分に観察できないため、 検査の前に便を除去する処置が必要です。 当院の場合、まず検査前日に便の量を少なくする検査食(3食)を自宅で食べ、 就寝前に下剤を内服します。 検査当日は午前9時頃に来院し、看護師から検査の説明を受けてから大腸を洗浄する特殊な 液体2リットルを約2時間かけて飲みます。 だいたい1~1.5リットル飲んだ頃から大腸内に残っている便が液体とともに出はじめ、 7~8回排便すると黄色い水だけになります。 便がこの状態になったら、午後から検査を始めます。
まず、スコープを大腸の奥(小腸と大腸の境い目)まで挿入します。大腸が曲がっている部位をスコープが通過する際には、圧迫感や痛みを感じることがありますが、 いずれも軽く、そのために検査を中止することは稀です。 次にスコープを抜きながら大腸全体を観察します。大腸には多くのヒダがあり観察するうえでの死角ができ易いため、 空気を入れてヒダを伸ばさなければなりません。観察を終えた部位から順次、空気を吸引していますが、 それでも検査中や 検査後にお腹の張りを感じられる方が3割程度いらっしゃいました。そこで当院では、 今年から空気よりも大腸からの吸収が早い炭酸ガスを送気する機器を導入しました。現在までに約100例で使用していますが、お腹の張りを訴えられる方が明らかに 減っています。 検査時間はおおむね25~30分です。
検査を受けた方からは、「検査は楽だったけど、大腸の中を洗浄する液体を飲むのがつらかった」というお話を聞くことがあります。 そのような方には、次回から錠剤タイプのお薬を使うことをお勧めしています。これは薬を5錠ずつ200ミリリットルの水かお茶で 計10回服用するもので、 大腸の洗浄効果は特殊な液体を飲んだ場合と同等です。錠剤タイプでも水を飲む量は2リットルと変わりませんが、 特殊な液体の味が苦手だったという方には好評です。
当院では昨年1年間で345例の大腸内視鏡検査を施行し、24例の大腸がんが見つかっています。しかし、そのうち16例は内視鏡で切除できた早期大腸がんでした。 また、128例で大腸ポリープがあり、こちらも内視鏡で切除しています。大腸がんができる経路には、正常粘膜からポリープができ「がん」に変わっていくものと、 正常粘膜からいきなり「がん」になるものの2つがあります。全てのポリープが「がん」になるわけではありませんが、 当院では直径5mm以上のポリープで表面の性状にみだれが見られるものについては、内視鏡で切除することにしています。
当院でポリープや「がん」がみつかった方のほとんどが無症状でした。「症状がないから」、「便潜血反応検査が陰性だったから」と言わずに、 40歳を過ぎたら是非、 大腸内視鏡検査を受けて頂きたいと思います。
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