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脂肪肝と脂肪肝炎
脂肪肝(脂肪性肝疾患)とは読んで字のごとく、肝臓に中性脂肪が過剰に沈着して肝障害を来す疾患の総称です。 以前はアルコールが原因であることが多いとされてきましたが、最近では飲酒習慣が無いものの肥満を有している方などに増えてきています。
このような「明らかな飲酒歴が無いにもかかわらず、肝組織所見はアルコール性肝障害に類似した肝脂肪沈着を特徴とする肝障害」のことを 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼んでいます。NAFLDのうち、単に肝細胞に脂肪沈着のみを認めるものを単純性脂肪肝と呼ぶのに対して、 脂肪沈着に加えて炎症・線維化を伴い、やがては肝硬変や肝臓がんへと病状が進んでいく可能性があるものを非アルコール性脂肪肝炎(NASH;ナッシュ)と称しています。 すなわち、NASHはNAFLDの重症型と考えられています。
脂肪肝の診断は腹部エコーやCTといった画像検査で行いますが、これだけでは単純性脂肪肝とNASHを区別することはできず、 確定診断には肝生(肝臓に細い針を刺して微量の肝組織を採取する)という検査が必須となります。血液検査ではAST、 ALTの上昇(正常値の2~4倍程度)などといった肝機能異常を示すことが多いですが、AST、ALTともに正常のこともあります。
NAFLDはメタボリックシンドローム(高血圧、糖尿病、脂質異常症)を基盤にしていることが多いため、食事療法と運動療法により生活習慣を改善することが最も重要です。 特に有酸素運動は筋肉・脂肪組織の代謝改善に役立ち、中性脂肪の低下やHDL(善玉)コレステロールの増加など、NAFLDの改善効果が期待できます。 一方、NASHにまで進展してしまうと現時点では確立した治療法が無く、一部の糖尿病治療薬や脂質異常症治療薬などを補助的に使っているのが現状です。
肝臓は別名『沈黙の臓器』と呼ばれるように、よほど病状が進行しないと自覚症状が現れません。健康診断などで肝機能の異常を指摘されたら、 「痛くもかゆくもないから」などといって軽く考えず、ぜひ早めに外来を受診していただくことをおすすめします。
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