我が国は速いスピードで高齢化が進行しています。2005年には65歳以上の高齢者人口の比率が21%に達し、世界で最初の超高齢社会に突入しました。
それとともに、糖尿病患者または糖尿病疑といわれる人が増えており、高血圧症、脂質異常症、肥満症などの『生活習慣病』をあわせて持つ人も多いといえます。
これらの病態は、動脈硬化性病変の原因となり、高齢者の生命予後を短縮するとともに、生活の質(QOL)を低下させ、高齢者における“寝たきり”の主たる原因となっています。
そもそも『生活習慣病』は、これまで続けてきた“好ましくない”生活習慣がその原因となって場合が多いため、“正しい”生活習慣に切り変えることは難しいようです。
1.加齢と糖尿病
加齢に伴い糖尿病の頻度は増加しますが、高齢になってから糖尿病を新たに発症する人が多くなったのと、以前から糖尿病である患者が累積されたことがあげられます。
加齢に伴う耐糖能異常のメカニズムとしては、
- 糖質過剰の食事内容・食後の血糖値の上昇
- 加齢に伴うインスリン初期分泌の遅延・低下
- インスリン抵抗性の増大
- 体組織変化:骨格筋の減少、脂肪組織の増加
- 運動量の低下
- ミトコンドリア機能の低下の影響
などが考えられています。
2.高齢糖尿病患者の特徴
個人差はありますが、
- 糖尿病の自覚症状に乏しい
- 脳や心臓などの血管障害を合併している
- 認知症とともに、自己管理能力が低下している
などの特徴があげられます。
一方では、生活習慣の変革は困難なため、食事療法が守れないことが多いようです。
さらには、薬剤の副作用が起きやすく、逆に、気づかないうちに重症化してしまうといった問題も派生します。
3.高齢糖尿病患者の医療
治療の前提として生活習慣の是正が重要ですが、実際上は困難な場合が多く、患者のQOLやニーズを尊重するのが大切と考えています。
いかにして、日常的に人として満足な生活を送ることが出来るかを考えるべきでしょう。 治療管理基準は、若い患者さんに比べると、若干甘くならざるを得ません。
低血糖は極力避けるべきです。病態の変化を適切に判断し、入院ないし入所の時期を失しないように努めています。
このことにより、逆に、在宅期間の延長、入院期間の短縮が可能となるからです。 介護保険制度や医療体制の変化に適合した医療介護が導入されています。
すなわち、患者/家族を取り巻く医療/介護担当者間の連携が重要です。在宅においては、家族の介護力がポイントとなります。