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誤嚥性肺炎と予防の話
食物、唾液、胃液、腔内細菌などが口を通って食道へ入るところを、誤って気管に吸い込んだ結果、誤嚥性肺炎が起こります。 高齢で、色々な病気を持つようになると誤嚥性肺炎を起こしやすくなり、その元になっている病気の治療が困難な場合が多いので、 誤嚥性肺炎は繰り返し起って治しにくくなり、ついには亡くなる方も少なくありません。今回は誤嚥性肺炎の原因と、効果を上げるのは難しいのですが予防についてお話しましょう。
喉の部分に外からそっと触れると、喉から胸の中に入ってゆく直径1.6 ~1.7 cmで電器掃除機の吸引ホースの様な凸凹がついた縦に長い管状のものがあります。 それが呼吸するときに空気が肺に出入りする通り道になる気管とその入り口になる喉頭で、その背中側に食道が接しています。 食べ物、飲み物、唾液などを口から呑み込むと、気管の入り口である喉頭を乗り越えて食道へ通って行く時に、 誤嚥が起こらないように適切なタイミングで瞬時に喉頭に蓋をするのが喉頭蓋で、その瞬間に飲み込む動作も完了しています。 喉頭蓋は舌の後ろの舌根部に接していて、舌の運動機能がおとろえると、喉頭蓋の機能もおとろえると言われています。
誤嚥が起こりやすい状態を挙げてみますと、
  1. 意識低下、脳梗塞、神経筋疾患、パーキンソン症候群、高齢などによる嚥下反射や呑み違えが起こったときの自己防衛である咳嗽反射の低下、声帯麻痺の状態など
  2. 独居等の対話が少ない生活環境による舌と喉頭蓋の運動機能低下と認知症などによる嚥下に対する注意力低下
  3. 逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニア、膠原病などによる食道運動の障害と内容物の逆流
  4. 気道粘膜繊毛運動と気道分泌により気道内異物や細菌を喀痰とともに排泄する自浄機能の障害は、先天性繊毛運動障害疾患、嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis)、糖尿病、深酒、冷気、口内や気道粘膜の乾燥等で起こり、誤嚥性肺炎の慢性化、悪化の原因になります。
これら以外にも誤嚥の原因になるものは多く、目立たない状態で起こっている不顕性誤嚥に注意し、予防や治療に努めましょう。

誤嚥性肺炎の予防や治療に役立つ知識
1.話をするときには呑み込まず、呑み込むときには話さない
お話をしながらものを呑み込むと、発声の際中には、気管の入り口にある喉頭蓋は気管に蓋をしていません。 このとき同時に飲み込もうとすると、健常な成人でも呑み違えを経験する事があります。 高齢者のかたには食べることに集中していただき、呑み込む瞬間には返事を要する問いかけをしないことです。
2.舌をきたえて喉頭蓋の素早い運動のトレーニング
在宅でも独居の場合や、介護施設にあっても周囲の方と対話が少ない高齢者の方は、舌やそれと関係が強い喉頭蓋の運動能力がおとろえて、 素早く気管の入り口に蓋をすることが出来なくなります。ご家族や周囲の方との世間話、井戸端会議は知的活動性の向上と呑み違えの予防になります。 発声練習、早口ことば、あるいは歌を歌うこともよいことです。「荒城の月」や「蛍の光」のように息の長い歌は呼吸訓練によいのですが、 「むすんで ひらいて」、「春の小川」や「蝶々」などの言葉が多い歌は舌や喉頭蓋の訓練になります。
3.口腔内を清浄に保つ
朝と毎食後、寝る前の歯磨で口腔内を清潔にしましょう。義歯を外したままにすると口腔内の清浄化に有効な唾液の量が減って不潔になりがちです。 唾液量を保つために食事の時のみでなく出来るだけ義歯を入れた状態で生活するようにしましょう。 義歯を呑み込んでしまう心配がない場合には就眠中の義歯の装着も有効です。
胃瘻からの経管栄養中で、経口摂取がほとんど無い方の場合にも唾液などは嚥下されるので,口腔の清潔保持が重要です。 胃瘻を設けた場合にも口腔のケアと義歯の装着が望ましいといわれています。認知症の予防に物を噛むことは大変重要で、その点でも義歯の装着は大切なのです。 また義歯をはずすと口は開けたままになりがちで、口腔と気道の乾燥を招きます。

病状によっては誤嚥の可能性が極めて高いこともあります。たとえば、嘔吐が続くときには仰向け(仰臥位)ではなく横向きの側臥位で寝かせ、 吐物を吐き出しやすく吸い込まないようにします。原因になっている病気や状態の回復が根本的な治療や予防になりますが、それが困難なことも少なくありません。 誤嚥性肺炎の誤嚥に直接対処する方法ではありませんが、肺炎球菌ワクチンやその他のワクチン、免疫力の低下への対処等は、 誤嚥性肺炎に重なって起こる可能性がある一般的な肺炎の予防に有効です。
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