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あなたの胃にもピロリ菌が
1.ピロリ菌ってどんな菌?
ピロリ菌は正式には「ヘリコバクター・ピロリ」という細菌で、1983年にオーストラリアのウォレンとマーシャルによって発見されました。 ピロリ菌が胃・十二指腸潰瘍の原因になっていることがわかり、二人は2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
胃の中では胃酸が出ているために普通の菌は死んでしまいますが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という特殊な酵素を持っており、 アンモニアを作り出して胃酸から身を守っているため、胃の中でも生き延びることができます。
ピロリ菌に感染すると全員に慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)が起こります。この慢性胃炎が胃・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、 胃MALTリンパ腫、胃がん、さらには全身的な病気を引き起こすことが明らかになってきました。 ちなみに、ピロリ菌がどのように感染するのかはまだわかっていないところも多いのですが、口から感染するのが大部分と考えられています。 衛生環境と関連していることが報告されていて、今後は感染する機会が減っていくものと予測されています。
2.ピロリ菌の引き起こす病気
胃・十二指腸潰瘍の患者さんでピロリ菌を検査すると、約90%の患者さんがピロリ菌に感染していると言われています。 これまで、胃・十二指腸潰瘍になると薬で胃酸の出を抑える治療を行っていましたが、一度潰瘍の治療をしても1年後には60%以上の患者さんが再発してしまうため、 非常にやっかいな病気と考えられてきました。したがって、再発を防ぐために長期にわたって薬を服用せざるを得ない(維持療法)患者さんが多くいました。 しかし、ピロリ菌の除菌療法でピロリ菌を退治すると100%完全にというわけではありませんが、 胃・十二指腸潰瘍の再発率が著しく低下する(胃潰瘍で11.4%、十二指腸潰瘍で6.8%)ことがわかってきました。
一方、ピロリ菌に感染している人と感染していない人に対して10年間調査を行ったところ、感染している人では2.9%に胃がんが発生したのに対し、 感染していない人では胃がんは発生しなかったという研究報告があります。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、 ピロリ菌に関連する疾患の治療および予防のため、ピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を行うことが強く勧められています。
3.ピロリ菌の除菌療法について
ピロリ菌の除菌療法を始める前に、まずは除菌療法の対象となる病気があるかどうかを確かめる必要があります。 内視鏡検査または造影検査(バリウム)で胃潰瘍または十二指腸潰瘍と診断されるか、もしくは内視鏡検査で胃炎と診断されてから、 検査でピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。なお、ピロリ菌の検査には内視鏡を使う方法と使わない方法がありますが、 それぞれの方法に長所・短所があるため、総合的に判断して検査法を選択します。
ピロリ菌の除菌療法は2種類の抗菌薬と胃酸の出を抑える薬の合計3種類を1日2回、7日間服用します。正しく服用すれば除菌療法は70~80%の確率で成功します。 1回目の除菌療法で除菌ができなかった場合には、抗菌薬のうち1種類を別の薬に変えることにより再度除菌療法を行います。 1回目、2回目の除菌療法を合わせた除菌成功率は95%以上になります。なお、除菌が成功したかどうかは除菌療法終了後4週間以上が経過してから検査を行います。 必ず検査を行って、結果を確認することが最も重要です。
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