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大腸がんについて
1.はじめに
大腸は長さ1.5~2mほどの臓器で、結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分けられます。大腸の主な役割は水分を吸収して便を形作ることであり、栄養素の消化吸収作用はほとんどありません。
大腸がんは大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。大腸のどこの部位にもがんができる可能性がありますが、特に日本人の場合はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われています。2019年のデータでは、大腸がんになった人は男性8万7872人で2位、女性6万7753人で1位となっています。
2.症状
早期の段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると症状が出てくることがあります。代表的な症状として、便に血が混じる(血便や下血)、便の表面に血液が付着する、下痢と便秘を繰り返す(交替性便通異常)、便が細くなる(狭小化)、便が残る感じ(残便感)、腹痛、嘔吐などがあります。 がんのできる位置によって症状が異なることもあり、硬い便が通る下行結腸やS状結腸、直腸では腹痛、嘔吐が起こりやすく、血便や便の狭小化も認めやすくなります。 一方、便がまだ水様で硬くなっていない盲腸、上行結腸、横行結腸では進行しても腹部症状が目立たないことも多く、貧血や腹部のしこりといった症状で発見されることもあります。
3.大腸がん検診
一般的に便潜血検査(2日法)が行われており、2日間の便を容器に取って、便中に含まれる目に見えない血液の有無を調べます。2回のうち1回でも陽性になれば大腸ポリープや大腸がんの可能性が考えられるため、精密検査が必要となります。ただ、便潜血が陰性だったからといって大腸に何も異常が無いということを保証してくれる訳ではありませんので、この点については注意が必要です。
4.検査
大腸がんが疑われた場合、まずは下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査)を実施することを検討します。内視鏡で大腸の内部を直接観察できることが最大の長所で、病変が見つかった際に組織を採取したり、小さなポリープの場合はその場で切除したりすることも可能です。内視鏡が入らない場合や、病変の部位および長さを評価する場合には注腸造影検査やCTコロノグラフィーが行われることもあります(但し、これら2つの検査については現在当院では行っておりません)。
5.治療
深さがごく浅くとどまる早期のがんについては内視鏡で切除するだけで治癒が見込める場合が多いですが、一定以上に深く進行したがんについては外科治療(手術)が必要となります。手術が困難な場合や、手術後の再発予防の補助的な治療として、化学療法(抗がん剤)や放射線療法などが考慮されます。
6.おわりに
大腸がんの死亡数は食事の欧米化の影響もあってか年々増加傾向にあり、今後もしばらくその傾向は変わらないものと予測されています。しかし、早期に発見して治療すればほぼ治癒が見込めるため、積極的に検診もしくは大腸内視鏡検査を受けていただくことをお勧めします。


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