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高齢者によく見られる病気-糖尿病
加齢とともに糖尿病の有病率は増加し、2019年国民健康・栄養調査によると、64~74歳の22.6%、75歳以上の21.5%は糖尿病が強く疑われる。
多くの高齢糖尿病患者は均一ではなく、個人差が大きいことが特徴である。
個人差を大きくしている原因は、①老年症候群、②併存疾患、③糖尿病の病態(病型や治療法など)であり、いずれも低血糖や死亡のリスクを上昇させている。
したがって、高齢者糖尿病では、これらの点を考慮したうえで個別化した治療を行うことが必要となる。
1.高齢糖尿病患者の特徴
個人差はあるが、1)糖尿病の自覚症状に乏しい、2)脳や心臓などの血管障害を合併している、3)認知症とともに、自己管理能力が低下している、などの特徴があげらる。
一方では、生活習慣の変革は困難なため、食事療法が守れないことが多い。
2.高齢化などで増加する併存症の予防、管理
サルコペニア、フレイル、認知症、うつ、低栄養、悪性腫瘍などに注目する。
2020年、後期高齢者の健診“フレイル健診”が始まった。“メタボ”対策(~65歳)から“フレイル”対策(75歳~)へのギアチェンジである。
病態の変化を適切に判断し、入院ないし入所の時期を失しないように努める必要がある。このことにより、逆に、在宅期間の延長、入院期間の短縮が可能となる。
3.血糖管理目標の設定と治療方針
高齢者糖尿病の血糖管理目標(HbA1c値)は、認知機能とADLの評価に基づいて3つのカテゴリーに分類し、低血糖が危惧される薬剤の使用の有無を考慮して決定する。
従って、治療管理基準は、若年者や併存症の無い患者と比べると、若干甘くならざるを得ない。
4.高齢者糖尿病の食事療法、運動療法、薬物療法
糖尿病治療の目標は、従来は「健康寿命延長とQOLの確保」であったが、2020年より「健康な人と変わらない人生」となった。
高齢者に対する摂取エネルギー制限は緩和すべきであり、体格指数(BMI)の目標値を22~25に設定された。
治療の前提として生活習慣の是正が重要であるが、実際上は困難な場合が多く、患者のQOLやニーズを尊重するのが大切である。いかにして、日常的に人として満足な生活を送ることが出来るかを考えるべきである。フレイル・ロコモ対策推進を目指し、無理のない運動療法を取り入れる必要がある。
薬物療法では、可能な範囲で治療を簡略化することが求められる。副作用への慎重な対応を忘れてはならない。
5.介護サービスについて
介護保険制度や医療体制の変化に適合した医療介護が導入されている。患者/家族を取り巻く医療/介護担当者間の連携が重要である。在宅においては、家族の介護力がポイントとなる。


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