病気のお話


澤田 格  


知っていますか?レジオネラ肺炎

 テレビや新聞で耳にした方もいると思います。これはレジオネラという細菌による肺炎です。感染力は弱く、健康な人にあまり感染せず、人から人へもうつりません。反面、幼児、高齢者、免疫低下者、男性喫煙者、飲酒家などでは感染しやすくなります。またレジオネラ菌は土壌、河川、湖沼など自然界に広く生息しますが、菌数はあまり多くないので通常は感染の危険はありません。
 しかし、クーラー冷却水塔、循環式浴槽(いわゆる24時間風呂)、循環式給湯器、加湿器、噴水などといった、水を取り替えず消毒していない環境で大量に増殖することがあり、これらが感染源となります。特にアメーバなどに寄生して増殖するので湿気が多く、暖かく、カビなどが繁殖しやすいような環境では爆発的に繁殖します。
 かつて在郷軍人病とも言われました。1976年、米国の在郷軍人(退役・予備役軍人)の集会で謎の肺炎が集団発生しました。屈強な男性を中心に計225人が発症し、34人が死亡した大事件でした。その後の調べで、会場となったホテルの空調設備内にレジオネラ菌が大量に繁殖しており、そこからの感染と推定されました。在郷軍人のことをレジオンLegionということからレジオネラ(Legionella)と名付けられました。
 レジオネラ菌は抗生物質を分解する酵素(β-ラクタマーゼをつくり、マクロファージという免疫を司る細胞の中でも増殖が可能であることから、いわゆる「一般的」な抗生物質では治りません。マクロライド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系・リファンピシンなどの細胞内に効果のある抗生物質を選択します。適切な治療が遅れると、肺炎の重症化・時には命に関わることにもつながります。最近では尿中抗原(レジオネラ菌の成分の一部が血液をまわって尿に出てきたもの)を調べて早期に診断ができるようになりました。



Dr
澤田 格 内科医長
外来予定





前のページ * 戻る * 次のページ